石川勇一の瞑想エッセイ「シューニャ」

2009年11月

エロスはなぜやってくるのか。そして、去っていくのか。

エロスとは強力な魅力によって結びつける力です。

真実、神、学問、美しいものに惹きつけられ、
それを追い求めてやまないのもエロスの力によるものです。

しかし、
多くの人がもっとも強力にエロスを体験するのは、
男女の間にやってくるときです。
苦しいほどに惹きつけられ、
高揚感と強い愛情を体験します。

これほど強い力が、なぜ私たちのところにやってくるのでしょうか。
エロスの目的はどこにあるのでしょうか。

エロスの高揚感を求めてやまない人や、
エロスを恐れて避け続ける人もいますが、
エロスの真の目的については考えたことがない場合が多いのです。

エロスによる衝動とは、合一への欲求です。
エロスによって引きつけられた異性と、
その情熱を受け入れ合うとこができたとき、
至福の合一体験をします。

合一のエクスタシーは、
男女の間以外でも起こりうる人間の可能性ですが、
男女間の合一が、
多くの人にとってもっとも体験する可能性が高いのです。

合一体験は、
私たちは本質的にはひとつであり、
愛と喜びにみちているという魂の真実を垣間見せてくれます。

エロスに駆り立てられた男女は、
相手に受けいられ、愛を手に入れるために、
ほかではありえないような努力をすることができるようになります。
エゴをなげうって奉仕することを少しずつ学んでいくのです。

しかし、どこかで限界が浮かび上がってきます。
愛と合一による真実の世界と、
自己中心的で分離した私たちの心の世界とは、
遠くかけ離れているからです。
エロスの強力な力によって、
愛と合一に近づいたり、一時的に体験すると、
それとは相容れない心の闇が、
自然と浮かび上がってくるのです。

エロスに陶酔していた男女はここで驚くのです。
なぜこんなことが起こるのかと。
甘美な喜びはどこにいってしまったのかと。

乗り越えられない闇があらわれて、
それを互いに避けるようになると、
エロスは急速に去っていきます。
エロスが去れば、
後には闇を抱えた人と人だけが残され、
愛と合一感はなくなり、
傷ついたネガティブな感情と分離感だけが残されます。

エロスはなんのためにやってきたのでしょうか。
私たちを絶望に陥れるためでしょうか。
あるいは生殖のための仕掛けに過ぎないのでしょうか。
そうではありません。

エロスは、まず、この世界には、
真実の合一と、愛が本当にあるということを、
私たちに体験的に学ばせるためにやってきたのです。
愛と合一は、一時的であったり、近似的なものにすぎないかもしれませんが、
この体験は、魂の本質、宇宙の真実に触れることであり、
私たちの目を開かせるためにエロスはやってきたのです。

それでは、なぜ途中で問題が生じて、闇が広がり、
エロスは去っていくのでしょうか。

私たちの心と魂が成長し、
真実と愛に近づいていくためには、
心の闇に光をあてていくことが欠かせないからです。
闇を抱えたまま光のなかにとどまることは不可能です。
だから、愛と合一にちかづこうとすれば、
かならず闇が暴かれていくのです。

闇が暴かれることは、
私たちにとっては苦痛に満ちたものであり、
ほとんど耐え難いものですが、
それは私たちが成長するために避けて通ることのできない課題なのです。
エロスによって闇が浮かび上がることは、
最強最善のセラピーが与えられているということなのです。
闇と向き合うことを避けたままで、
愛、真実、合一の安らぎにとどまることはできません。

しかし、
私たちはエロスのこうした目的を知らないので、
闇があらわれると心を閉ざしてしまいます。
二人の間には深い溝が生じるか、
あるいは相手のせいでエロスが消えたと思い、
憎しみあうかもしれません。

エロスは、
退屈な人生を楽しくしてくれる単なるスパイスではありません。
私たちの魂を真実へと引きあげ、
愛を学ばせ、
心の闇に向き合い、闇を解消することを目的としているのです。
闇と向き合うことなしに、
エロスの高揚感だけを求めることは誤りです。
愛を学ぶ意志をすて、闇から避けた途端に、
エロスは消え去ります。

目的が達成されなくなったことを知ったエロスは、
速やかに二人を去り、
残された二人は、
闇を抱えた自分たちに直面するのです。

プロフィール

石川勇一石川勇一

相模女子大学教授。日本トランスパーソナル心理学/精神医学会副会長。日本トランスパーソナル学会理事。「アートマンの館」代表。臨床心理士。

「アートマンの館」にて、カウンセリング、ヒーリング、臨床動作法、箱庭療法、ケイシー療法、瞑想法、山学道セラピー(山巡礼・法螺貝・滝行・勤行等)などを実践。

著書に『スピリチュアル心理学入門』(春風社、2009年、単著)、『自己実現と心理療法』(実務教育出版、1998年、単著)、『スピリチュアリティの心理学』(せせらぎ出版、2007年、分担執筆)ほか。

石川勇一『心理療法とスピリチュアリティ』勁草書房、2011年2月20日発刊。スピリットセンタードセラピー提唱の本格論文集。


◎コメントに対してコメントをできないことが多いです。その点、ご了承ください。


「アートマンの館」 

●ワークショップ情報
瞑想会:2012年1月8日(日)13:30~15:30
山巡礼with法螺貝in日向山:2012年1月29日(日)9:20~14:00頃
ヒーリング入門講座:2012年3月4日・11日
(以上、参加予約受付中)


●相模女子大学 石川研究室
http://www.sagami-wu.ac.jp/ishikawa/


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