
日本ではまだ知る人ぞ知るというバリー博士だが、カリフォルニアでは今、講演会のチケットが最も取れない人のお一人だという。アメリカで医師として活躍してきたDr・バリー・カーズィンは、医師であると共にチベット仏教の僧侶であり・教師でもある。
前回の日記でお知らせしましたように、「愛ある医療を考える 市民公開講座の第二回」が5月4日(火・祝日)に東京・調布市で、「愛ある医療 東洋の叡智との出逢い」というテーマで開催されることになりました。今回のゲスト講師は、1つ前の日記で書きました上田紀行先生、そしてもう一人が、今回のバリー博士です。
バリー博士は、カリフォルニア州立大学パークレイ校にて哲学の学士取得後、南カリフォルニア大学にて医学を学び、ワシントン大学の医学部助教授に就任。その後、インドのブッダガヤにて、ダライ・ラマ法王から比丘(ビクシュ、僧侶)の戒を受ける。
バリー博士は、幼少期に命を脅かす大病を経験したことがきっかけで医師になる決意をする。しかし、医師として活躍されている中で、母親と妻という身近な愛する人の死をたて続けに体験したことから、仏教の道に入る。
北インド、チベット亡命政府のあるダラムサラという地に18年間暮らし、高血圧の治療に効果のあるチベット伝統医学の研究、教育方法の実践を行う。またその間、瞑想の修行を同時に続ける。ダライ・ラマ14世の推薦もあり、仏教の修行を続けながらも医師として人々の治療にあたっている。
私は、去年の秋に東京で行われたバリー博士の講演と瞑想会に参加しました。その時に印象に残ったお話です。
「チベット仏教では、クリアライトの体験(二元性を超えた意識状態。体験している私がなく、体験している対象との区別がない意識状態。祈る私と、祈られるあなたという主客の関係、固体意識、分離意識がない一なる意識状態)を経て、ブッダ意識になることを目指します。その境地では苦しみがありません。重要なのは、ブッダの境地は人を助けるための最高の力がある状態だということです」
「本来の私たちの人生の目的は、他の人たちを助けて幸せにしてあげることです。自分の幸せだけを追い求めても決して人は本当には幸せになれないのです。だからこそ自分がブッダ意識になる必要があります。それは、自分も人も一緒に幸せになっていく道なのです」
「ブッダ意識になるためには、死に際にクリアライトの体験を積み重ねていくことが重要です。何度も生まれ変わっていく間に自分が死の準備をしてクリアライトの体験を延長していくのです」
「道は確かに長いです。しかし、それは可能なのです。クリアライトの体験を遠ざけているのは心をブロックしている否定的な感情や思考です。しかし、心をもっと純粋によりポジティブに変えることならできます。最初に「可能だ」と思うことから始めて一歩一歩進んでいけばいいのです」
「チベット仏教で最初にすることは、慈悲の心を育むことです。私たちはみな心の最も深いところに慈悲の心をもっているのです。その慈悲心をより深くしていくのです。これがブッダ意識への第一歩です。いきなり「空」を目指してもただ観念的な理解になってしまいます。慈悲の心をまず育むことこと、これこそがブッダ意識への道の最初の一歩なのです」
「そして次に「空」を学びます。ここでは、私たちが知覚している現実が偽りであることを学びます。私たちはみな、現実を“曇った心のフィルター”を通して見ていて、それを現実だと思いこんでいますが、それは真の現実ではありません。最初は「空」を知的に理解し、次に、瞑想することによって体験していきます。それがチベット仏教の本質です」
「ほとんどの人は、一生懸命学校で勉強し、いい学校、いい会社に入ろうと頑張ります。社会に出てからは仕事に頑張ります。いろいろなものを手に入れ、いろいろなことを達成しようと多くの人が懸命に努力します。それが自分が幸せになることだと信じて疑わないからです。ところがこのようにして手に入れたものが、人生の最後になってみると、実はたいしたものではなかったと死の際に気づくのです」
「しかし、同じ努力を、慈悲の心を育むこと、愛を学ぶこと、空を学ぶこと、空を体験することに向ければ、素晴らしい歓びや、やすらぎや、叡智を手に入れることができるのです。愛と慈悲の心の深い人ほど、自分にも人にも優しくできますから、結局人生が幸せになっていくのです。愛と慈悲の心を養っていくには、すべての人の中に優しさを見ていくことです」
「自分に優しくしてくれる人、愛してくれる人、大切にしてくれる人の中に優しさを感じること、見ることは、誰にもできることです。しかし、自分に対していやなことを言ってくる人、不快な思いをさせる人、怒りが湧いてくるようなことをしてくる人などにはとても優しさなど感じられない、見れない、慈悲の心など持てないと多くの人は思うでしょう。しかし、こういう人がいないと私たちは忍耐を学ぶことができないのです。成熟した人間は忍耐の大切さを知っており、自分とは違う価値観や生き方があるのだということを理解しています。それが成熟した大人であるということです」
「そして、人は相手が自分を怒らせたのだと思い、相手を責めるものですが、実は、自分の今までの怒りの反応パターンを毎回、人を変え、状況を変えて繰り返しているだけなのです。人はいつも同じような反応パターンを持っています。もし今目の前に怒りを感じる人がいたとしたら、その人はあなたの反応パターンを変えるチャンスとして現れてくれたのです」
「好きな人の中にも、嫌いな人の中にも、ニュートラルな気持ちでいられる人の中にも、すべての人の中に優しさを見ることができる自分になれば、自分の中にある温かい心、慈悲心を育むことができるのです。そうすれば、どのような人に対しても愛をもてるようになり、結果として自分がいちばん幸せになっていくのです。ただ愛すること。愛すれば愛するほど自分が歓びに溢れてくるのです」
「誰かが苦しんでいたら、落ち込んでいたら、不安にさいなまれていたら、ハートを開いて、愛と慈悲を持ってその人と一緒に時間を過ごしてください。ただ寄り添うのです。その時、寄り添う人も寄り添われる人もハートがとてもオープンになって、抑えていたものが溢れてきて自然と涙が流れてくることもあるでしょう。その涙は浄化となり心をきれいにしてくれます。それは、その人たちの中に、その場の中に愛と慈悲の力が働いていたからなのです」
「これは死に逝く人に自分が何ができるのかということでも同じです。死に逝く人が最もほしいものは愛と慈悲とやすらぎ、心の平安です。孤独にしてはいけません。ただそばにいてあげるだけいいのです。何か話さなければと思う必要もありません。言葉はなくても伝わるものがあるのです。からだに触れてあげてください。手を握ってあげるだけでもいいし、心地いいマッサージをしてあげるだけでもいいでしょう。あなたの存在を感じ、温かさを感じ、愛と慈悲を感じられたら、その方は、心が静かで平和で、愛に満たされて逝くことできるのです。愛と慈悲心をもって寄り添ってあげることが何より大切です」
私は、講演のあとに個人的にバリー博士とお話できる時間をいただけた。私は、バリー博士にお尋ねした。大好きなお母さんを亡くされ、結婚して数年で奥様を亡くされ、愛する人を立て続けに失ったその悲しみをバリー博士はどのようにして乗り越えてこられたのですか、と。バリー博士はニコっと柔和な笑顔で答えられた。
「悲しい時は泣き尽くすしかありません。愛する母と妻を次々に亡くし、世の中にこれほど悲しいことがあるだろうかと思いました。どれほど泣いても涙が出てきました。でも、ある日、こんな風に思えたのです。あんな素晴らしい母が自分の母であったことが本当に誇らしく思えたのです。あの母の息子に生まれたことを深い歓びとして感じられるようになったのです。そして、妻を失って呆然自失となり、寂しくて、悲しくてしかたがなかったこと、涙が枯れるほど泣き明かしたこと、これほど愛せる人と出会えた自分はなんて幸せな人生なのだろうと思えたのです」
「子供の頃に死ぬかも知れない重篤な病気になり、幸いにももう一度いのちをいただけたことから医師になることを決意することができました。母と妻を立て続けに亡くした悲しみは、私をチベット仏教の道に誘いました。そこでダライ・ラマに出逢えて、今こうして、医師として僧侶として生かされ、人様のお役にたてていることを考えると、私の人生はなんと幸せな人生だろうと思っています」
バリー博士と上田紀行先生がゲスト講師として登壇される「愛ある医療を考える 第二回市民公開講座」は5月4日(火・祝日)に開催されます。
タイトル “愛ある医療、東洋の叡智との出会い” ”
<問い合わせ、お申し込み:コクーン事務所>
Tel&fax:03-3326-6601
月~金:12:00~18:00(担当:渡辺)
大会ホームページ http://www.cocoon-japan.com/
<お知らせ>
2010年のスケジュールをHPにアップしました。
岡部明美公式ホームページ http://anatase.net/
3月13日(土)岡部明美講演&和みのヨーガ
4月27日(火)~29日(木・祝日)松山市・中島3daysワークショップ
4月3日(日)名古屋1dayワークショップ
5月18(火)・19日(水) 岐阜・関市2daysワークショップ
5月23日(日)東京1dayワークショップ
携帯でもSQ Lifeメッセンジャー・ブログが閲覧できます。
http://blog.sq-life.jp/m/
