岡部明美のスピリチュアルな旅で出会った”もの・人・場・言葉たち”

幸せって何だろうね

okabe3.JPG息子が高校1年の入学祝いに買ってほしいと言ったセキセイインコの「チッチとポッポとクック」が元気に育っている。息子は、朝起きるとまず3羽のインコとひとしきり遊ぶ。そして、インコにエサをあげた後は私に向かって「俺も朝飯!」と言う。雛から飼ったせいだろうか、3羽はよく人になついているのでとてもかわいい。


私がパソコンで原稿書きをしている時は、たいてい私のスリッパに三羽が乗っているので、私はブランコのように足をブラブラ揺らせながら原稿を書いている。スリッパの上が飽きるとヒョコヒョコと上がってきて、私の両肩にそれぞれ1羽づつ、もう一羽は頭の上に乗っかる。


両肩と頭にインコを乗せて原稿を書いている姿って、人が見たらけっこう笑える光景だろう。時には私の髪を巣のように思うのかインコがウンコすることもあるが、私は「参ったなあ」と思いながら微妙に幸せだったりする。


昨日、久しぶりに息子の赤ちゃん時代のアルバムを見ていたら、涙がでるほど懐かしくなった。この粗忽者の私がよく育ててきたなあと思う。自分がどうやって子育てしてきたのかさえもう覚えていない。


初めての子育てだったから本当に無我夢中だった。息子が1歳の誕生日に書いた手紙が出てきた。私が、息子に一番伝えたい思いがこの1通の手紙にすべて書き記されていた。


~ “1歳の誕生日を迎えた真之へ”   ~       
                                                
「真之、お誕生日おめでとう!」

真之が初めてこの手紙を見るのは、一体何回目の誕生日かしら。お母さんとしては、真之が中学になったらこの手紙を渡そうかなと思っています。なぜなら、真之の誕生について、ぜひ知っておいてほしいことがあるからです。中学生くらいになれば、自分の人生や生き方について考え始める頃だと思いますので、これからお母さんが話すこともよくわかってくれると思います。


真之は、自分が生まれた頃のアルバムをも見て、何か変に感じたことはありますか。お母さんが部屋の中でも外でも、いつも帽子やスカーフをかぶって写っていますよね。その訳をこれから話したいと思います。


この手紙を書いている今は、1992年、4月16日。明日、17日は、真之の1歳の誕生日です。真之の1歳の誕生日をお父さん、お母さん、そして真之の3人で迎えることができたことは奇跡に近い出来事といってよく、神さまに感謝しています。


お母さんは、真之を産んだ直後に、脳腫瘍と水頭症という病気になりました。それは、いのちにかかわるとても怖い病気でした。お母さんは、真之を産んでからずっと激しい頭痛に悩まされました。


それまでも頭痛の経験はありましたが、今まで経験したこともないような耐え難い痛みでした。9日目には頭が割れそうなほどの痛みになり、鎮痛剤をもらって飲んでも一向に効かなくて、お母さんは産婦人科のベッドでのたうち回っていました。


ついに、真之を産んで10日目に金槌で後頭部を何度も殴打されたような激しい頭痛が起こり、その苦痛によって、お母さんは意識を失ってしまいました。お産も女の人にとってはものすごく痛くて苦しいのですが、脳腫瘍の痛みはその比ではありませんでした。まさにこの世の地獄でした。


お母さんが意識不明になってから、急遽、脳外科に回され、CTを撮ったところ、お母さんの小脳に大きな腫瘍が二つもあることがわかったのです。手術室にお母さんが入っていく時、お父さんはお医者さんに「いのちに別状はないんでしょうか」と聞いたところ、「いのちの保障はできかねる厳しい状況にありますが、最善を尽くしてやります」と言われたそうです。


手術が終わり、意識が戻り始め、薄く目を開けて見ると、お父さんだけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんがとても心配そうな顔をしてお母さんの顔を見ていました。


お母さんは両手両足をベッドにくくりつけられていて、頭から、からだ中から、いっぱい管がでていてサイボーグみたいになっていました。知らないお医者さんや看護婦さんもいて、お母さんは一体何が起きたのかわからず、これは夢なんじゃないかと思いました。


翌日、お医者さんに何が起きたのかを聞いた時、背筋が寒くなり、目の前が真っ暗になりました。あと半日手術が遅れたら多分手遅れだったかもしれないこと。手術で助かる確率は少なかったのに、とにかくお母さんの生命力は強かったそうです。


真之のお父さんが、お母さんが元気になってからこう話してくれました。「あの時は、悪い方に考えるのはよそうと自分に言い聞かせたけれど、でも、ふと、もしかしたらこの子が明美の忘れ形見になってしまうかもしれないと考えてしまう一瞬があった」と。


それを聞いた時、お母さんは「真之を残して天国に逝かなくて本当に良かった」と思いました。真之は、体内切迫仮死状態になり、危険な状況で生まれたため、すぐ小児科の未熟児保育器に入れられたのでお母さんは一度も真之を抱っこできなかったのです。自分の産んだ子を一度も抱っこすることもなく死んでしまうなんて、お母さんは絶対にできないと思いました。


手術後のお母さんは、顔を洗うことも、ご飯を食べることも、排泄も、何一つ自分でできませんでした。からだ中からたくさん管が出ていて、頭にも管を通されて固定されたため寝返りも打てず、お母さんは完全な障害者になってしまいました。


自分で自分のことが何一つできない弱者になった自分を受け入れることはとても惨めでつらいことでした。でも、この経験は、お母さんが、ひとりでがんばらないで、人に助けてもらうこと、感謝するということ、人の痛みがわかる人間になるために学ばされたことなのだと思いました。


お母さんは、お医者さんが驚くような回復力で元気になっていったのですが、やはり、真之が生まれてくれたから、お母さんはがんばれたのだと思います。真之を抱っこしたい、真之のお母さんをやりたいっていう目標があったから、病気を治したいって心から思えたのです。


お母さんは、毎日ベッドに横たわりながら、流れる雲や陽の光、星の瞬(またた)き、風にそよぐ樹木の葉を見ていたけれど、ただそれだけで涙があふれてきて仕方がありませんでした。


生きているということ、自分が今こうして生きているということが、ただ、それだけで、うれしくてうれしくて仕方なかったのです。今までだって毎日のように見ていた、空や雲や星や花たちなのにね、涙なんかこぼれたことなんかなかったもの。


その時、お母さんは「幸せって何だろう?」って思いました。「幸せの形」なんかほんとは何もなくて、ただ「幸せだなあ」って感じられる心があるだけなんだなって。どんな小さなことにも「幸せだなあ」「ありがたいなあ」って感じられる心があったら、人は幸せになっていくのかも知れないね。


本当に大切なものって、いつも当たり前のようにしてあるものなんだなって思いました。幸せの種は、自分が見つけようと思えばどこにでもあるんだよね。真之の誕生は、お母さんの人生に幸せの種をいっぱい運んでくれました。というより、真之の存在そのものが幸せの種だったのです。


真之は、お父さんとお母さんの祖先の誰ひとりが欠けても生まれなかったんだよ。真之の前には、それはもう何十億といういのちの川の流れがあって、その大きな大きないのちの川が真之を運んできてくれたのです。どんぶらこ、どんぶらこってね。


すごいでしょ、これって。不思議だよね、いのちというのは。こうやって運ばれて来たいのち、運ばれていくいのちの川の流れを、運命っていうのかもしれないね。


過去から未来へと脈々といのちのバトンは手渡され、お父さんとお母さんが出会って、今、真之にそのいのちのバトンが手渡されました。真之のいのちは、真之だけで単独で存在しているわけではなく、完結しているわけでもなく、過去にも未来にもつながっていて、この宇宙のすべてにもつながっているのです。


いのちは偶然降ってきた雨水の一滴じゃなく、一人ひとりが本当に生まれる必要があったからこそ生まれたんだよ。お父さんとお母さんが真之が生まれることを望んだだけではなく、この大きな宇宙にも望まれたからこそ、真之はこの世界にやってきたのです。


真之が生まれた1991年4月17日から、真之は小児科の未熟児保育器、お母さんは脳外科の個室と離ればなれになったけれど、あの時、お母さんも真之も生きる為に必死だったんだよね。ふたりともよくがんばったと思う。


桜の咲く季節に、真之の誕生を待ちわびる日々を送り、桜の花が散り終わった頃、真之は誕生し、サツキが満開の季節にお母さんは病気と闘い、杏の実がなり始めた頃に病院を退院しました。


お母さんの人生で一番長かった春がこうして終わり、初夏の訪れを感じさせる風が肌に心地よかったことを覚えています。病院を出た時、お母さんは思わず子供みたいにスキップしていました。自分の足で歩けることがうれしくてたまらなかったのです。


道路を走る車やダンプカーはとてもこわかったけれど、でも、世界が本当に新鮮に見えました。世界がキラキラしていて、世界って光であふれているんだって、あの時思ったのです。当たり前だと思っていたことが、当たり前にできなくなった時に、当たり前のことなんて本当はひとつもないんだなってお母さんは思いました。


おそらくこれから先も、この季節になると、あの時のことを思い出すでしょう。でも、月日は少しずつ記憶を薄れさせていくので、こうして真之に手紙の形にして残したいと思ったのです。あの体験は、お母さんの新しい人生の始まりだから忘れてはいけないと思ったのです。


真之がどれだけ大変な状況の中で生まれたのか。そして、どれだけみんなに支えられ、見守られて育ってきたのか。真之の誕生は、神さまからの贈り物だったのですが、神さまは、ついでにお母さんにも「生まれ変わりなさい」って言いたかったみたいです。


真之のこれからの長い人生の中には、楽しいことだけではなく、きっと、つらいことや悲しいこと、苦しいことも起きてくると思います。たくさんの壁にもぶつかっていくでしょう。


そして、いつか、どんなにがんばっても乗り越えられない大きな壁にぶちあたる時が来るかもしれません。その時には、もう一度この手紙を開けてください。お母さんがこの手紙に魔法をかけておいたからね。真之は、きっとその大きな壁を乗り越えられるよ。


お父さんとお母さんは真之が幸せになれるようにいつでも応援しているからね。もし、真之の人生に苦しいことがいっぱい起きてきても、苦しみは、喜びに出会うためのチャンスだってこと覚えておいてね。


人が人生で体験する苦しみや悲しみの大きさは、その人がこの世でなすべき仕事の大きさと比例するんだって。自分が苦しんだことというのは、同じ苦しみをもつ人たちへの贈り物になるんだね。


でも、真之は、お父さんとお母さんの子供として生まれてくれたこと、ただそれだけで私たちへの最高の贈り物です。真之が真之になること(意味わかるかなあ。もう少し大人になったらわかるかも知れないね)、お母さんが楽しみなのはそれだけです。


真之は、お父さんやお母さんの期待ではなくて、自分の期待に応えて生きていって下さい。真之が、自分が本当にやりたいことやって生きていること、好きな仕事をしていること、自分らしくイキイキと生きていること、真之がただ幸せでいること、人生を楽しんでいること、それが周りの人たちへの贈り物になるんだってこと忘れないでね。


PS:ついこの間まで、ミルク飲んで、ウンチして、泣いて、寝て、の繰り返しだったアカンボ真之が、明日は、1歳の誕生日だなんて!もう部屋中つたい歩きして、「ウマウマ」と初めて覚えた言葉を連発して得意になっている。

見るもの、触れるもの、興味津々。アカンボ真之にとって、ほんと、世界はワンダーランドなんだなあ。うん、でも、お母さんも夢見る頃をとうに過ぎた今になってまた、「やっぱり世界はワンダーランドだあ!」って思えて、なんだかウキウキ、ワクワクの人生が始まった気がしているよ。

人生ってやっぱりいいなあ、人間っていいなあ、生きているって本当に面白いなあって心から思えるようになったのは、あの病気を経験してから、そして、真之が誕生してからだよ。真之、私をお母さんに選んで生まれてくれて本当にありがとう!


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<  お 知 ら せ >
         

* 8月4日(土)に京都で講演会があります。(満席・キャンセル待ち)

* 8月25日(土)、心身のリラクゼ-ション&メディテーションの会「シャンテイ」の第二回目があります。(東京・自由が丘)

* 9月7日(金)~9日、長野県、女神山で2泊3日のワークショップ「Be―Work」があります。

* 9月15日(土)、「全国思風塾大会」(名古屋)のシンポジウムがあります。
               
   パネラー:芳村思風先生(感性論哲学創始者)
         村上和雄先生(筑波大学名誉教授) 
         行徳哲男先生(教育者)
         土橋重隆先生(医師)
               
   コーディネーター:岡部明美
               
   テーマ「命をひらく  ~この命何に使うか~」


* 9月22日(土)、「1 day ワークショップ」があります。(東京・自由が丘)

* 詳しくはホームページをご覧ください。

岡部明美の公式ホームページ:http://anatase.net/

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コメント

投稿者: まなみん

体験からのお話は実感があって心に響きますね。
私も書いていこうかなっていう勇気を与えられました。
みんなそれぞれ、すさまじい人生を持っているんですよね。
書ける特権を与えられていることに感謝です。

2007年07月11日 05:42

投稿者: 華

ちょうど、母と小競り合いをした直後に読みました。
なんてタイミングでしょう…

母はあけみちゃんにもお話したように、病弱で、後産も出ず、私は逆子で首にえなわが巻いた仮死状態で生まれました。(この世に生まれでて最初に逆さに吊られて背中をばしばしされたわけです)

でも、このあけみちゃんの体験と息子さんへのお手紙を読んで、「ああ、幸せなのに、何も気がついてなかったんだ」と、思いました。
壮絶な二人。
今在る健やかな命。健やかな生活。

地獄のように長かった春をくぐりぬけ、穏かな生活の中でみんなに幸せの光をふりまいているあけみちゃんが、今、ここに、生きていてくれて、ほんとうによかったです。

宇宙に望まれた命。
みんなそうなんですよね。
今回も号泣。ありがとうございました。

2007年07月11日 16:58

投稿者: ちい

あけみちゃん
いのちの贈り物って最高ですね。
女の人ってすごい。

今のこの時代にここに生まれて生きてること
とてもうれしく思っています。
簡単に感謝って言ってしまいがちだけど
命をいただいたこと
とても感謝しました
今、この瞬間に。
だから、自分の命を
自分を生きていきたいと思います。

自分の痛みが
誰かの喜びになるかもしれません。
先日、みちえちゃんに言われて
はっと しました。

あけみちゃんの素敵な手紙を
多くの人に読んでもらいたいです。

2007年07月11日 23:23

投稿者: ちーちゃん

あけみちゃん
娘は3週間早く未熟児で生まれ、小さな産院には保育器がなく、生後すぐ隣の県の日赤病院に運ばれました。
そして一週間後、面会に行き心臓に異常があることを知らされました。保育器の中の痛々しい姿の娘に「ごめんなさい」を繰り返しました。5歳になって手術するまでの日々は、2歳上のヤンチャな息子を抱えて必死でした。

転勤先の東京に主人と息子を置いて、長年診ていただいている先生をたよって大阪の医大に入院、手術を受けました。
辛いことではあったのですが、それを上回る感動と感謝の日々でした。

この感動と感謝の思いを決して忘れてはならないと思い、毎日日記を書き続けました。それを義父が手作りの冊子にしてくれました。

娘が何かで悩んだ時、「こうして助けていただいたのよ。自分だけの命ではないの。大切に生きて元気になる事が、助けてくださった先生や、応援してもらったみんなに、恩返しすることになるのよ」と日記を見せようと、宝物入れの箱に入れていました。

中2の時陰湿ないじめに永い間苦しみ、胃潰瘍になり休んで寝ているとき、出番が来ました。
娘は、ベットの中でづっとづっと泣きじゃくっていました。私も声をかけず、そばで一緒に泣きました。

2度目の出番は、結婚式の前日でした・・・・

何年か前に私の手元に又戻ってきて、宝の箱の中にしまっていたのですが、娘より私にこの日記の出番が必要な時が、一杯ありました。私自身にためにも書いておいて良かったと、思いました。

一生懸命助け合った夫婦の関係も、妹の入院のために、歯を食いしばって寂しさに耐えていた息子の事も、みんなに心配かけないようにと、頑張っていた当事者の娘の事も、それから、忘れてはならない、輸血のために協力してくださった、主人の会社の皆さんのことも、この記録をのこして居なかったら、記憶が薄れていただろうと思います。

今度は実現するかどうか分かりませんが(笑)孫に「貴女のお母さんはねえ。。」と陽だまりで絵本のように読んで聞かす日がくればいいなあと、夢見ています。

大切な事を思い出す機会を与えていただき、ありがとうございました。


2007年07月12日 02:55

投稿者: hunter

生かされている命
選んでくれた命

大切にして、みんなで幸せになってください

きっと、幸せが向こうからやってきます(=^・^=)!!

いい話をありがとう☆☆

2007年07月12日 12:58

投稿者: 美樹ちゃん

そう、しあわせって自分の中にあるんですよね
それ、忘れてしまいがち。
いつも思い出して、しあわせを感じていきたいな。

2007年07月12日 23:49

投稿者: 泉水

素敵なお話ありがとうございます。
健康であることのすばらしさ
幸せであることを感じさせてくださってありがとうございます。
些細なことにも幸せが感じられます。
感謝です
泉水

2007年07月17日 07:07

投稿者: Elulseseawl

Very nicce!

2010年12月02日 10:11

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プロフィール

岡部 明美岡部 明美

ワークショップ・トレーナー/セラピスト/カウンセラー/研修講師/文筆家/東海ホリスティック医学振興会顧問。

独身時代は、シンクタンクにてマーケティングプロデューサーとして活躍。30代半ばで結婚。長男出産直後に脳腫瘍と水頭症を発病し生死を彷徨う。自分の死に直面するという体験を通して、いのちの根源からの問いの答を求めて自己探求の道に歩みだす。著書に「もどっておいで私の元気!」(善文社)「私に帰る旅」(角川学芸出版)

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