岡部明美のスピリチュアルな旅で出会った”もの・人・場・言葉たち”

子育ても一段落 

WS002650.JPG専業主婦をしていた頃は、けっこう時間に余裕があったから、息子のアルバムの写真には1枚、1枚全部キャプションをつけていた。育児日誌もまめに書いていた。キャプション付きのアルバムや育児日誌は今見てもけっこう面白い。


この間、本棚を整理していたら、息子が小学校2年くらいの頃に書いていた「ぼくのおりょうりレシピ」というノートが出てきた。私が、子供にも作れそうな簡単なお料理を教えたものを息子が面白がって作っていた時期があるのだ。


「やきそば」「おこのみやき」「タラコスパゲッティ」「ホットケーキ」などの項目の横にレシピが書かれていて、一番上には「しどうしゃ:あけみ」と書いてある。「しどうしゃ:お母さん」と書いていないところが笑える。


「ぼくのおりょうりレシピ」なんてかわいいノートを作っていた息子も今じゃまるで亭主みたいに「腹減ったー、メシー」しか言わなくなったけど、とりあえず大学には行けることになってほっとしています。息子から、「俺がどこの大学に受かったかなんかブログに書くなよ、個人情報なんだからな」と言われました。


いやあ、それにしてもいくつか受けた大学合格発表の日は朝からそわそわ、ドキドキでした。部屋の中を熊みたいにウロウロしていましたー。母に電話で合格の報告したら電話口で「よかっかたねえ、うれしい」と泣いていました。孫でも泣くんだ。私の時もどれだけ心配してたんだろう。私の子育ては、親になって初めて知る親心の日々でした。

子育て日誌より


息子が小学校3年の頃のこと。私と息子の二人、息子の友だちとそのお母さんと一緒にスキーに行った。私はボーゲンしかできないヘタッピーだし、息子はスキーは初めてだった。あちらは、毎年家族で北海道にスキーに行くというスキー大好き一家だった。息子は半日スキー教室に入ったので、ボーゲンくらいはできるようになった。それでも初級ゲレンデで5、6回は転んでいる。


かなりうまくなってきたので、息子に「中級者ゲレンデに挑戦してみる?」と聞いたら「うん」と言うので、中級者ゲレンデのリフトに向かった。二人でリフトに乗り「がんばろうね。きっとこっちのゲレンデの方がスリルがあって面白いよ」などと話しながら乗っていたのだが、いつまでたっても着かない。


リフトはどんどん山のてっぺんに向かっていく。山のてっぺんは雲と霧がかかっていてちょっとこわい雰囲気。滑っている人もだんだん少なくなってきた。私はだんだん不安になってきた。


息子が「なかなか着かないね、お母さん」と聞くから、「うん、おかしいね。もう着いてもいい頃だよね」と言いながら、私は冷や汗がでてきた。不安は的中。着いた所はやはり上級者ゲレンデだった。


びびった。下を見てみたら眩暈がした。まさに、まっさかさまの世界。狭い雪道の両脇は谷底だ。こんなところ、どうやってボーゲンしかできない私と、スキー若葉マークの息子が滑っていけるだろう!


無理だ、危険過ぎる。私は理性的に判断し、リフトのおじさんに事情を説明した。しかし、非情にもおじさんは、「下りのリフトは、ケガをした人と急病の人以外は利用できません」と冷たく言い放つではないか。


そんな殺生な。まるで役所の仕事みたいなこと言わないでよ、まったく。ここは楽しいスキー場でしょう。それじゃ、税務署のおじさんみたいじゃないの。私は、かなり食い下がってみたが問答無用という感じで切り捨てられてしまった。


仕方がない。私は腹をくくった。「よし、今から、お尻スキーで下まで降りるよ。左肩にスキーの板とスティックを乗せて。右手と両足はブレーキとハンドルだよ。はい、お尻ついて、滑るよ今から。前のめりにならないように気をつけてね」


「ウソー、お尻でスキーするのー? 信じられないよ。だってもし、スキーズボンのお尻が破けたらどうするのさ? 雪がお尻に入ってきて冷たいじゃない。お尻のシモヤケなんか恥ずかしいよ。ほんとに、あんな麓までお尻スキーで行けるの? 摩擦熱でお尻が熱くなってヤケドしたらどうするんだよ!」


「そんなのはやってみなきゃわかんないでしょ! 人生にはね、予想もつかないような出来事が次々に起きてくるものなの。その時が知恵と力の使い時なのよ。腹がくくれればなんだって超えられるの。とにかく、一度決めたら、四の五の言わないでやる!」


「一度決めたらって、僕が決めたわけじゃないのに・・・」


「はい、出発進行、茄子のおしんこーって、いつもまあちゃん言ってるよね。そのノリで行くよ。ランランラン♪♪」


口ではこうやって気合を入れてみたものの、実は、私は相当びびっていた。ゲレンデに鳴り響いているユーミンの歌が空々しく聴こえてくる。「こっちはそれどころじゃないのよ。八甲田山なんだから、私たちは」と、お門違いに私はいらついていた。


私たちは、まるで冬山登山で遭難した親子みたいに、ほとんどまっさかさまに見える上級者ゲレンデをスキー板を肩にかついで、必死になってお尻で滑り降りた。リフトに乗っている人たちは、私たちに「がんばってー」と手を振っているが、さすがに手を振り返す余裕はなかった。私の顔はひきつっていた。


息子は「こわいよー、寒いよー、冷たいよー」とベソをかきながらも、アイスバーンになっているデコボコした上級者ゲレンデを一生懸命お尻スキーで滑り降りていた。山ひとつをお尻だけで滑り降りるという経験は、普通あまりないだろう。私もこの経験だけは人生で一度でいいと思った。


息子は、山の中腹まで降りてきたら少しは余裕がでてきたのか、「僕もがんばるから、お母さんもがんばってよ」などと言って私を励ますのだった。やっと初級者ゲレンデまで来た。ここからはもう大丈夫だ。息子に「さあ、ここからはもうスキーで滑っていこうね」と言う間もなく、すでに息子はスキー板に足を乗せ滑り出した。


するとどうだろう。驚いたことに、息子は直滑降でまっしぐら、一度も転ばずに下まで降りていったのだ。私も思わず直滑降で彼の後を追った。すごいスピードで彼は飛ばした。彼はかっこよく止まって、私にガッツポーズを見せた。得意満面の顔。


「すごーい、かっこよかったよー、直滑降なんて習ってないのによくできたね」


「うん、人のを見ていたから、なんとなく自分でもやれそうだと思ったんだ」


「それにしても一度も転ばなかったなんてすごい。さっきまで初級者ゲレンデでも、5、6回は転んでいたのに。やっぱ、上級者ゲレンデで修行したから、もう初級者ゲレンデなんかなんともなくなったんだね。いい体験をしたね。日本には昔から、苦労は買ってでもしろとか、かわいい子には旅をさせろっていうことわざがあるんだけど、ほんとにその通りだね。昔の人はいいことを言う」


「お母さん、言っとくけど、自分の不注意で僕を危険な目に合わせたってこと、少しは反省しているの? パパがいつも、お母さんは反省しないって言っているよ」


いや、この時ばかりは少し反省した。そして、息子はいつになく毅然とした眼差しで私にこう言い放ったのだ。


「僕の人生最大の修行は、お母さんが、僕のお母さんだってことだ!」

<お知らせ>

前回と前々回の日記で、5月4日(火・祝日)第二回市民公開講座「愛ある医療 東洋の叡智との出逢い」(調布)のゲスト講師のバリー博士と上田紀行先生のことを書きましたが、今日からチケットが販売されました。チケットとチラシは私も持っていますので、参加希望の方は私の個人メッセの方に「氏名・郵送先・枚数」をお知らせくだされば郵送させていただきます。


<問い合わせ、お申し込み:コクーン事務所>
Tel&fax:03-3326-6601  月~金:12:00~18:00(担当:渡辺)
大会ホームページ   http://www.cocoon-japan.com/


岡部明美公式ホームページ http://anatase.net/

4月27日(火)~29日(木・祝日)松山市・中島3daysワークショップ

4月3日(日) 名古屋1dayワークショップ

5月18(火)・19日(水) 岐阜・関市2daysワークショップ

5月23日(日) 東京1dayワークショップ

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プロフィール

岡部 明美岡部 明美

ワークショップ・トレーナー/セラピスト/カウンセラー/研修講師/文筆家/東海ホリスティック医学振興会顧問。

独身時代は、シンクタンクにてマーケティングプロデューサーとして活躍。30代半ばで結婚。長男出産直後に脳腫瘍と水頭症を発病し生死を彷徨う。自分の死に直面するという体験を通して、いのちの根源からの問いの答を求めて自己探求の道に歩みだす。著書に「もどっておいで私の元気!」(善文社)「私に帰る旅」(角川学芸出版)

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