
今日(25日)、この地域の新聞記者の女性がインタビューをしに家にやってきました。男女共同参画について話を聞きたいということだったのですが、話しこんでいるうちに、彼女が昨年陥った精神的な危機についての話題で持ちきりになりました。多分、話したかったんでしょうね。その話題になったとたん、すごい勢いでしゃべりだしたので、切実さがじかに伝わってきました。
現在、彼女は48歳なのですが、20年ほど前からローカルの新聞社に記者として勤めはじめ、精力的に仕事をこなしていたのですが、昨年の六月頃、突然、仕事が手につかなくなったというのです。医者に相談したらうつ病と診断され、抗うつ剤を処方されたらしいのですが、副作用がひどくて怖くなり、やめてしまったそうです。その後、免疫療法という代替療法を受けて序序に回復し、半年後に仕事に復帰したそうです。
苦しかったときに彼女が出会った一冊の本があったそうです。それが、なんとわたしがだいぶ前に翻訳して彼女に差し上げた『愛と親しさの鍵』(トマス・ムーア著、平凡社)だったのです。この本は人生の出来事を自我の観点からではなく、魂の観点から見るとどう見えるかを綴ったもので、彼女が直面した精神的な危機のようなものを、魂が成長するチャンスとして捕らえています。彼女は頭の良いインテリ女性ですから、社会的な適応力にもすぐれ、これまではバリバリ仕事をしてこれたのでしょうが、内奥の魂の欲求とすこしづつずれていったのではないかと思います。そのずれが限界に達し、精神的な危機として現われたのでしょう。今の社会、知的傾向の強い人はほとんどかならずと言っていいほど、ある年齢に達すると、身体的な病か精神的な危機に見舞われ、人生の軌道修正を迫られるのではないかと思います。それはいわば魂からの警鐘であり、全体性からの圧力のようなものかもしれません。人生は直線ではないんですよね。
昨今、出版不況で本がなかなか売れないのですが、八年以上前に僕が出した本で、いまだに毎年版を重ねている本があります。ジュリア・キャメロンの『ずっとやりたかったことを、やりなさい』(原題『Artist’s Way』)という本です。いわゆる創造性開発のプログラムなのですが、数ある類書の中でいまだに人気を保っているのは、キャメロンの手法がきわめてユニークだからでしょう。そのユニークな手法の一つが「モーニング・ページ」と言われるものです。モーニング・ページとは、三ページの手書きの文章で、意識の流れをありのまま綴ったものです。
たとえば、
今日は比較的よく眠れた。気分がいい。身体も軽い感じがする。二日酔いもない。毎晩、酒を飲む習慣をなんとかしなければならない。酒は脳細胞を破壊するという。もう何十年も飲みつづけているわけだから、俺の脳は相当やられているんじゃないだろうか。脳だけはやられたくない。仕事もできなくなるし、喜怒哀楽も感じなくなる。それは嫌だ。妻は庭造りに励んでいるが、いくら庭に美しい花が咲いても、感動する心を失ってしまったら、元も子もない。雨が降ってきた。寒い・・・
といった感じです。とにかく心に浮かんでくることを検閲せずに紙に書き起こしていくのです。その目的は「脳の排水」だとキャメロンは言っていますが、思いがけない気づきがあったと言う話を何人もの知り合いから聞かされました。このモーニング・ページ、翻訳家の山川夫妻がブログの中で紹介してくれたこともあって、ずいぶん広がっているようです。興味のある方は是非試してみてください。