菅靖彦の男のスピリチュアル道

書評 『カミを詠んだ一茶の俳句』山尾三省著、地湧社、2000年

カミを詠んだ一茶の俳句―希望としてのアニミズム 近代の合理主義的な社会は、理性による自由と平等の実現を目標にかかげ、古い因習や宗教からの脱却を推し進めてきた。日本も、戦後の民主主義の普及により、近代社会の仲間入りを果たし、めざましい経済の発展を通して、世界有数の経済大国にのしあがった。
 しかし、経済的な発展とは裏腹に、多くの人が心の拠り所を失い、殺伐とした社会の中で、孤独にあえいでいるのも事実だ。その原因の一端を広い意味での宗教心の喪失としてとらえ、これからの時代の宗教心のあり方を探ろうというのが著者の狙いである。
 著者の山尾氏は経済至上主義に現代人のニヒリズムの原因を見ているが、個人主義を一概に否定しようとしているのではない。古い因習や宗教性から脱して自由になった個人を尊重し、一人一人の個性や多様性を生かしながら、万物に宿るカミ(従来の神と区別するために著者はあえてカタカナ表記を使っている)と対話する、アニミズム的な宗教心こそ、これからの時代に必須なものだと説いているのだ。そして、そのようなアニミズム的な宗教を生涯かけて実践した先達として、俳人の小林一茶に着目し、独特の観点から、一茶の生き方や俳句に迫っている。
 最近、世界中に横行するテロリズムの背景には宗教の問題がからんでいる。宗教は人々の結束を固める基盤になる力をもっている反面、他者を排除するという矛盾した側面ももっているのだ。宗教の原型ともいうべきアニミズムに、普遍的な宗教の可能性を探ろうとする山尾氏の観点は、集団主義的な宗教に内在する矛盾を乗り越える一つの方策としても、注目に値すると言っていいだろう。
 本書が単なる文献学にはない透明な「清涼感」をもっているとすれば、著者の山尾氏自身が、圧倒的な屋久島の自然の中で暮らすアニミズムの体現者であるというところからきているのだろう。

コメント

投稿者: 桐谷

菅さんSQ Life参加ありがとうございます

私が初めて屋久島に行ったときに偶然、三省さんと会いました
三省さんの詩が好きで屋久島に住んでられるいうことは知っていたのですが、たまたま息子さんを家まで車で送ったのが縁でした
そして翌年、三省さんが亡くなられたのです

運命を感じました


2006年12月19日 23:02

投稿者: 菅

桐谷さん。投稿ありがとう。こちらこそよろしくお願いします。

2006年12月22日 18:25

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プロフィール

菅 靖彦菅 靖彦

1947年、岩手県花巻市生まれ。
国際基督教大学人文科学科卒業。
1980年代の初めより、トランスパーソナル心理学関係の著作の翻訳をはじめ、ケン・ウィルバーやスタニスラフ・グロフなどトランスパーソナル心理学を代表する心理学者の主要な著作の翻訳に参加。
自らも『変性意識の舞台』(青土社)を著し、人類の変容を唱える。
その一方で、グロフが開発したホロトロピック・セラピーの実践にあたり、下北沢のMACAギャラリーを拠点にした創造性のワークショップを展開。
日本トランスパーソナル学会副会長。
http://homepage2.nifty.com/sugaworld/

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