
サヴァン症候群と呼ばれる脳の障害をもつ青年によって書かれた本書は、人間の脳と心の謎を考える上で、実に貴重な著作である。
ダスティ・ホフマン主演の映画『レインマン』で一躍有名になったサヴァン症候群の人は、計算や記憶の面で超人的な能力を発揮すると言われているが、著者のダニエル・タメットも例外ではない。円周率を22500桁まで暗誦し、新しい言語を、文法を含めてたった一週間でマスターしてしまう文字通りの天才なのだ。彼はまた数字に色、形、質感、感情が伴って見えるという「共感覚」の持ち主でもある。
ただ、サヴァン症候群の人は、その多くが精神的・肉体的障害を抱えており、自分の内面を言葉でうまく説明することができないと言われている。ところが、ダニエルは自分の内面を生き生きと描ける稀有な才能を併せもっているのだ。
孤独な障害者が、数を友達にし、家族の愛情に支えられながら、徐々に心を開いて他人とコミュニケーションすることを覚え、ひとり立ちしていく心の軌跡は感動的である。
サヴァン症候群は、人間の偉大な可能性を垣間見させてくれる貴重な本である。読者はきっと改めて障害とは何かを考えさせられるだろう。
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