菅靖彦の男のスピリチュアル道

あやかりたい男性

  これまでたくさんの男性とめぐりあってきましたが、あやかりたいと思う男性はあまりいません。でも、先ごろ亡くなった俳優の森繁久弥はあやかりたい男性の一人です。彼が人と話すときの、あの独特の間の取り方。あれは完全に自分が確立していないとできない間の取り方です。本気なのかとぼけているのか分からない彼の話し方を聞いていると、自己を確立した人だけが持てる自由さを感じるのです。それは虚実の狭間にいて、いつでもあらゆる方向に踏み出せる自由さです。僕なんかつい話しの流れに引きずりこまれてしまい、しゃべっているようだけど、ただロジックに踊らされていることが多いんです。僕だけじゃなくて、ほとんどの人がそうであるような気がします。既製品の言葉を鸚鵡返ししているだけで、そのことにも気づいていない人が多い。スピリチュアリティやエコロジーにはまっている人たちも例外ではありません。自分の言葉をもちたいものです。

 僕が森繁にあやかりたいと思うもう一つの理由は、何をしても、何を言っても、女性に憎まれない点です。彼は若いとき、とにかくかたっぱしから女性を口説いていたと言われています。それをすべて笑い話にしてしまうしたたかさを、一体どうして培ったのでしょう。うらやましい限りです。人間のエロスは、当人の心の持ち方で、うしろめたいものにもなりうるし、笑えるものにもなりえます。でも、ただ開けっぴろげだけでも、エロスがもっている神秘的なあやうさは表現されません。インターネットにポルノが氾濫していますが、エロは感じさせても、エロスを感じさせるものはほとんどありません。森繁のエロスとの関係は、やはり彼の人間性が反映されているのでしょう。

 とにかく森繁久弥には楽しませてもらいました。ご冥福をお祈りします。

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プロフィール

菅 靖彦菅 靖彦

1947年、岩手県花巻市生まれ。
国際基督教大学人文科学科卒業。
1980年代の初めより、トランスパーソナル心理学関係の著作の翻訳をはじめ、ケン・ウィルバーやスタニスラフ・グロフなどトランスパーソナル心理学を代表する心理学者の主要な著作の翻訳に参加。
自らも『変性意識の舞台』(青土社)を著し、人類の変容を唱える。
その一方で、グロフが開発したホロトロピック・セラピーの実践にあたり、下北沢のMACAギャラリーを拠点にした創造性のワークショップを展開。
日本トランスパーソナル学会副会長。
http://homepage2.nifty.com/sugaworld/

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