
最近の大学教員は高校訪問ということをします。少子化で学生数が減って来たために、ひとりでも多くの学生に来てもらうために高校に出向いて大学や学課の説明をするのです。スピリチュアルケアという新しい学課の説明のために、私も徳島県の南側の高校数校を巡ることになりました。
最後の高校が高知県との県境であったので、金曜日の訪問の仕事を終えた後の週末を私は室戸岬を訪れてみることにしました。室戸岬はお大師さんが求聞持法の修行をして、明けの明星を見てその光が自分の中に飛び込んでくるような体験をして悟りを得たとされるところです。
室戸岬は、岬の西側では夕日が見られ、東側では朝日が見られ、少しの距離を歩くだけで美しい朝日と夕日がみられる場所です。その晩は宵の口から大雨が降ったのですが、雨が止んで夜中にさっと星空が開けました。私は1時過ぎから宿を抜け出して、まずは御厨人窟で蝋燭をともして読経してから、夜が白むまで星空を眺めながら海岸を歩き、ところどころで瞑想しました。
水平線の雲海から朝日がでるのを海岸で見ると、すぐに洞窟の中に入って朝日が差し込んでくる様子を確かめました。昇ったばかりの朝日が洞窟に差し込んでくる様子は、それは美しい光景です。私は、差し込んでくる朝日の中に立って、自分の影が洞窟の奥面に映るのを見つめました。プラトンの、洞窟のイドラの話を思い出しました。何年か前のこと、伊豆の竜宮堂という洞窟でも冬至の日に同じような光の体験をしました。その時には洞窟から泳いで外に出て朝日を浴びました。
空海は、行当不動の洞窟で夕日を眺め瞑想し、夜中に歩いて移動して御厨人堂で朝を向かえ朝日の体験に瞑想を深めたのではないかと思われます。「明星来影す」という神秘体験は、そうした修行を重ねた末に起こったのではないかと思われました。
若き日に役の行者の弟子たちと共に大峰の山々を歩き、室戸の岬を歩きながら宗教的神秘体験を深めた空海は、やがて大峰と室戸の中間にある高原湿地の高野山に修禅の道場を開きます。
高校訪問という仕事に導かれてお大師さんの足跡をしのんだ週末でした。
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